金井酒造店
創業154年の老舗酒蔵が、なぜDXに着手し、どのようにして業績不振と後継者不在の危機を乗り越え、現代に復活を遂げたのか?SaaSツールが組織の「潤滑油」として機能する、その変革の軌跡に迫る。
創業154年の老舗酒蔵、金井酒造店
業績不振と後継者不在の課題を克服し、企業を復活させ、持続的な成長を実現すること。
- ⚔業績不振と後継者不在という経営課題
- ⚔昔ながらの紙ベースの業務文化
- ⚔全社でメールアドレスが1つしかないというITインフラの遅れ
- ⚔非効率なプロジェクト管理と社内外連携の課題
- ⚔「仕事のための仕事」の増加と従業員エンゲージメントの低下
- ⚔変化への対応力(アジリティー)の欠如
創業154年の老舗酒蔵である金井酒造店は、業績不振と後継者不在に加え、紙文化による業務非効率やITインフラの不整備により、変化への対応力が著しく低い状態でした。このままでは持続的な成長が見込めないため、顧客、従業員、社会全体にとって価値のある企業へと変革を促し、組織のアジリティーを高めることで、事業再生と競争力強化を図る必要があったのです。
| 軸 | Before(変更前) | After(変更後) | |
|---|---|---|---|
Who 売り手 | 創業154年の老舗酒蔵「金井酒造店」、くじらキャピタルが支援 | 金井酒造店の代表取締役社長(六代目蔵元)佐野博之氏、くじらキャピタル共同創業者 代表取締役 竹内真二氏、一橋大学大学院准教授 藤川佳則氏 | |
What 売り物 | 業績不振、後継者不在、紙文化の業務管理、メールアドレスが全社で1つ、非効率なプロジェクト進行、顧客接点不足。 | DX推進による企業復活、Asana導入による業務管理の効率化、ECサイトやSNSでの顧客接点増加、リブランド、IoT導入による製造工程改善。 | |
When タイミング | 2021年10月(DX開始以前) | 2021年10月以降、2022年版「中小企業白書」掲載時点 | |
Where 売り場 | 神奈川県秦野市(金井酒造店) | 神奈川県秦野市(金井酒造店) | |
How 売り方 | 従来のリアルオフィスを前提とした業務、デジタルの要素を付け加える働き方。 | DXバイアウトファンドによる支援、デジタルを前提とした上での対面コミュニケーションの活用、AsanaなどのSaaSツールを組織の潤滑油として活用した全社的なDX推進。 |
創業154年の老舗酒蔵でありながら、業績不振と後継者不在という深刻な問題に直面。業務管理は紙文化が根強く、全社でメールアドレスが一つというITインフラの遅れが顕著だった。これにより、業務用SaaSの導入も不可能で、社内外と連携が必要なプロジェクトは非効率的。これら「仕事のための仕事」の増加は、従業員エンゲージメントの低下を招き、組織は変化に素早く対応するアジリティーに欠けていた。当時のビジネスパーソンの働き方も新旧の手法が混在し、自社や自分自身のベストな働き方を探る中で、課題がいくつも露呈していた。
DXプロジェクトを通して、組織の方向性を定めて意思統一する「歯車をうまく回す」ことの重要性を再認識し、Asanaなどのツールがその「潤滑油」として機能。 Asana導入による社内の摩擦はほぼなく、活用レベルの底上げが進行中。結果として業績は上向き、2022年版「中小企業白書」にも掲載されるほどの注目を集めている。経営者はじめ現場メンバーが足並みを揃え、前向きに取り組むことが成功の鍵となり、組織のアジリティー(変化に素早く対応する力)が高められた。
導入前の課題
創業154年の金井酒造店は、業績不振と後継者不在という深刻な課題に直面していました。業務管理においては紙文化が根強く、全社でメールアドレスが1つしかないなど、基本的なITインフラすら不十分な状態でした。これにより、SaaSツールの導入も不可能であり、社内外との連携が必要なプロジェクト管理は非効率的で、「仕事のための仕事」が増加し、従業員エンゲージメントの低下も懸念されていました。先行き不透明な時代において、組織のアジリティー(変化への対応力)が欠如している状態でした。
採用したアプローチ
金井酒造店は、DXバイアウトファンドのくじらキャピタルの支援を受け、DXを中軸とした企業再生に着手しました。DXの目的を「CX(顧客体験)×EX(企業変革)×SX(社会変革)」と捉え、全社的な改革を計画しました。具体的には、「顧客接点」「業務管理」「製造工程」の3領域で施策を実行しました。顧客接点ではECサイトの立ち上げとD2C体制の構築、SNSなど十数種類のツールの導入により、顧客との接点を大幅に増加させました。業務管理では、まず社内通信環境を整備し、社員一人ひとりに個別のメールアドレスを発行。その後、プロジェクト管理ツールAsanaを導入し、複数のプロジェクトやタスクの進行管理を効率化しました。製造工程ではIoTを導入し、抜本的な改革を進めました。これらの取り組みを通じて、組織全体の足並みを揃え、デジタルツールを組織の「潤滑油」として活用することで、アジリティーの高い企業への変革を目指しました。
他社が真似する際の学び
- •DXの本質は「CX(顧客体験)×EX(企業変革)×SX(社会変革)」である。
- •単にデジタルを導入するだけでなく、組織の構造や意思決定、評価の仕組み、働き方まで変える企業変革(EX)が重要である。
- •デジタルツールは組織の「潤滑油」として、組織の方向性を定め、意思統一し、歯車をうまく回すために機能する。
- •デジタルツール導入の成功には、経営陣と現場メンバーが足並みをそろえて前向きに取り組むことが不可欠である。
- •経営者の理解と、マネジメント層による予算内でのデジタルツール導入といった「小さな成功例」の蓄積が、組織のアジリティー向上と成功の鍵となる。
