新潟医療福祉大学が精神科医療における患者の希望尊重と権利保護の仕組みを提言
新潟医療福祉大学の野村照幸教授らが、精神疾患のある人が病状悪化時でも自身の希望や価値観が尊重されるための仕組みについて論考を発表しました。英国の国際誌『BJPsych Open』に掲載されたこの論文では、単にクライシス・プランやAdvance Choice Documents(ACDs)を文書として作成するだけでなく、その作成支援から活用、見直しまでを含む「実装インフラ」としての整備の重要性を提唱しています。日本の精神保健医療制度の課題も踏まえ、実践的な実装要件を提示し、国際的な議論への貢献を目指します。
この記事のポイント
- 作成支援: 本人が希望を明確にするためのサポート
- 共有: 関係者間での情報共有
- アクセス: 危機時の迅速な情報へのアクセス

研究の背景と目的
精神科医療の危機的状況において、患者本人の希望や治療に関する選択が十分に反映されない課題に対し、英国では危機時に備え、本人の希望を記録するJoint Crisis Plans(JCPs)やAdvance Choice Documents(ACDs)といった取り組みが進められてきました。しかし、これらの効果については一貫した結果が得られていません。本論文は、その原因を文書自体が有効でないと捉えるのではなく、「作成された文書が危機時に実際に参照され、支援に活かされるための仕組みが不十分だった可能性」にあると指摘しています。
クライシス・プランの「実装インフラ」としての再整理
本研究では、クライシス・プランを単なる「文書」ではなく、以下の要素を含む「実装インフラ」として整備する必要性を提唱しています。
- 作成支援: 本人が希望を明確にするためのサポート
- 共有: 関係者間での情報共有
- アクセス: 危機時の迅速な情報へのアクセス
- 活用: 支援における文書内容の積極的な利用
- 見直し: 状況に応じた内容の更新
- 例外時の説明責任: 文書内容と異なる対応をする場合の明確な説明
危機時の本人意思を支える実装要件
本論文では、危機時の本人意思を支えるために特に重要な4つの実装要件を提示しています。
- 作成を支えるファシリテーション: 本人の意思を引き出す専門的な支援
- 現場で活用できる具体性: 危機時に医療従事者が実際に役立てられる具体的な内容
- 例外時の透明性・説明責任: 文書に反する対応が必要な場合の、明確な理由説明と記録
- 日常の支援体制に組み込まれたアクセス可能性: 普段の支援の中で、文書が容易に参照できる体制
日本の精神保健医療の課題を国際的な議論へ発信
本論文は、英国のJCPsやACDsの議論を参照しつつ、日本の精神保健医療制度における特有の課題を国際的な視点から検討しています。これにより、日本の現場で認識されている課題を、国際的な精神保健医療の議論へと発信する機会を創出しました。
今後の展望
研究者は、今後、日本の地域精神保健医療の現場において、危機時の本人意思を支える仕組みをどのように導入し、その効果を評価していくかについて、研究と実践の両面から取り組んでいく意向です。
参考リンク
- 元記事URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002120.000032951.html
- 新潟医療福祉大学: https://www.nuhw.ac.jp/
- NSGグループ: https://www.nsg.gr.jp/
- 原論文情報DOI: https://doi.org/10.1192/bjo.2026.12059
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