変革企業が市場に正しく評価されない課題を解決する「Brand Equity Story」
企業がAIや新規事業などに投資し変革しても、市場の認識が追いつかず企業価値に反映されない「市場認識ギャップ」が課題となっています。この課題を解決するため、デロイト トーマツは「Brand Equity Story」を提唱。これは従来の投資家向けEquity Storyを、顧客、人材、パートナー、投資家の4市場に拡張し、企業が何者でなぜ選ばれるべきかを一貫して伝える戦略です。市場ごとの認識を管理する「Brand Value Map」を用いて、企業変革を持続的な企業価値向上へ繋げます。
この記事のポイント
- 従来のEquity Story: 主に投資家に対し「なぜこの会社に投資すべきか」を示す。
- Brand Equity Story: 顧客、人材、パートナー、投資家の4市場に拡張し、企業が「どのような存在として理解され、なぜ選ばれたいのか」を一貫して示すストーリー。
- 市場認識ギャップの影響: 新しい課題の相談先として想起されない、高度人材に選ばれない、共創相手として声がかからない、成長投資が将来価値として理解されない。

企業が競争力強化のためにAI、データ、人的資本、新規事業、M&Aなどに投資しても、その変革が市場に正しく理解されず、企業価値に結びつかないことがあります。これは「市場認識ギャップ」と呼ばれ、市場が企業を従来のまま認識し続けるため、顧客、人材、パートナー、投資家といったステークホルダーの行動変容を促せないことが原因です。
知財・無形資産を「価値創造の源泉」へ
2026年8月3日に内閣官房から公表された「価値創造を加速する知財・無形資産投資・活用のガイダンス」では、ブランド、技術、データ、人的資本などの知財・無形資産を企業価値向上の源泉と位置づけています。これは、これらの無形資産を単に保有状況や投資額を開示するだけでなく、それがどのように競争優位を生み、将来のキャッシュフローにつながるかを経営戦略に落とし込み、市場との対話を通じて示すことを求めています。
Equity Storyを4つの市場へ拡張する
デロイト トーマツは、知財・無形資産から企業価値への経路に「市場認識」と「ステークホルダーの行動」を組み込み、その解決策として「Brand Equity Story」を提案しています。
- 従来のEquity Story: 主に投資家に対し「なぜこの会社に投資すべきか」を示す。
- Brand Equity Story: 顧客、人材、パートナー、投資家の4市場に拡張し、企業が「どのような存在として理解され、なぜ選ばれたいのか」を一貫して示すストーリー。
各市場に対して、企業が選ばれる理由を市場ごとに翻訳しつつ、企業の強みと将来像を一貫して伝えることが重要です。Brand Equity Storyは、経営戦略、パーパス、製品・サービス、人事・採用など、企業活動全体と整合して初めて市場認識として定着します。
企業の実体と市場認識の時間差を埋める
企業が新しい戦略や投資をしても、市場が従来のカテゴリーや評価軸で企業を理解し続けることで「市場認識ギャップ」が生じます。このギャップが残ると、変革は企業価値に繋がりません。
- 市場認識ギャップの影響: 新しい課題の相談先として想起されない、高度人材に選ばれない、共創相手として声がかからない、成長投資が将来価値として理解されない。
- 認識フレームの重要性: 情報の量だけでなく、個々の情報がどの企業像と結びつき、どのような意味で理解されるかが重要です。例えば、AI投資も「従来型のシステム供給者」と見られれば効率化と解釈されがちですが、「高信頼な変革実装パートナー」と見られれば変革能力の表れと解釈されます。
Brand Equity Storyは、過去の実績を信頼の根拠としつつ、AI、データ、変革設計力など新たな無形資産と経営の意思を結びつけ、「これまで何を成し遂げた企業か」を「これから何を実現できる企業か」へ翻訳する役割を担います。
ブランドを「経営資本」として管理する「Brand Value Map」
市場認識を経営成果へ接続し管理するために、デロイト トーマツは「Brand Value Map」を提唱しています。これは、知財・無形資産への投資、経営戦略、Brand Equity Story、企業活動、4市場の認識、ステークホルダー行動、事業KPI、経営・財務KPI、企業価値までを一連の経路として可視化するものです。
- 市場認識資本: 顧客の相談、人材の応募、パートナーからの協業、投資家の投資判断など、将来の選択に継続的に影響する理解、期待、信頼、選好の蓄積を指します。これは、経営上の価値ストック、価値ドライバーとして測定・管理すべきとされています。
- Brand Value Mapの経営用途:
- 共通言語: 経営、事業、財務、IR、人事、ブランドが同じ経路を共有。
- 投資判断: 誰のどの認識を変え、どの行動とKPIに影響させる施策かを明確にする。
- 先行管理: 財務成果が現れる前の認識と行動の変化を捉え、施策や資源配分を見直す。
経営陣が市場に答えるべき3つの問い
白土氏は、企業変革を企業価値につなげるために、経営陣が以下の3つの問いに答えるべきだと強調しました。
- 何を価値創造の源泉とするのか?: どの知財・無形資産を競争優位、参入障壁、価格決定力の源泉として強化するか。
- 4市場で、なぜ選ばれる企業になるのか?: 顧客、人材、パートナー、投資家がそれぞれ何を理由に自社を選ぶのか。
- どう企業価値へつなぐのか?: 市場認識資本の変化を、どの行動、事業KPI、財務KPIを介して企業価値へ接続するのか。
知財・無形資産時代のブランド経営では、どの市場のどの認識を変え、どの選択を生み出すかを定め、企業活動とコミュニケーションに資源を投下し、その認識変化を測定し、行動と経営成果への接続を検証することが求められます。
参考リンク
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