売り方2026/7/25
利き手のスイッチを支える脳内メカニズムを解明:アセチルコリンバランスが鍵
結論(先に要点)
順天堂大学の研究グループが、訓練による利き手の切り替えには、脳半球間のアセチルコリン活動の一時的な左右差が重要であることをマウスで発見しました。従来の利き手研究ではメカニズムが不明確でしたが、マウスモデルで利き手を安定的に切り替えることに成功。さらに、訓練する手と反対側の脳半球へのアセチルコリン作用が不可欠であること、このアセチルコリン活動の一時的な左右差が切り替えに重要な神経基盤となることを明らかにしました。
この記事のポイント
- マウスにおいて、訓練によって利き手が安定的に切り替わる行動モデルを確立しました。
- 利き手の切り替えには、訓練を行う手とは反対側の脳半球へのアセチルコリン(神経伝達物質の一つで、記憶・学習・覚醒などに関わります)の作用が必要であることが分かりました。
- 脳半球間に生じるアセチルコリン活動の一時的な左右差が、利き手の切り替えにおいて重要な役割を果たすことを明らかにしました。

順天堂大学大学院医学研究科脳回路形態学の岡本和樹 非常勤助教、日置寛之 教授らの研究グループは、マウスを用いて利き手(利き前肢)が切り替わる脳内メカニズムを解明しました。
研究成果のポイント
- マウスにおいて、訓練によって利き手が安定的に切り替わる行動モデルを確立しました。
- 利き手の切り替えには、訓練を行う手とは反対側の脳半球へのアセチルコリン(神経伝達物質の一つで、記憶・学習・覚醒などに関わります)の作用が必要であることが分かりました。
- 脳半球間に生じるアセチルコリン活動の一時的な左右差が、利き手の切り替えにおいて重要な役割を果たすことを明らかにしました。
研究の背景
ヒトの利き手は左右の脳機能の差を反映していると考えられていますが、その切り替わるメカニズムはこれまで十分に解明されていませんでした。研究グループは、マウスも利き手を持つことに注目し、訓練によって利き手が長期間維持されるのかを調査しました。また、アセチルコリン神経が前肢運動の学習に重要であることから、この神経系が利き手の切り替えにどう関わるかを検証しました。
研究内容
- 利き手の安定的な切り替えモデルの確立
- マウスにペレット状の餌を前肢で取る課題を行い、利き手を判定しました。
- 非利き手で餌を取る訓練を5日間実施した結果、約4分の3のマウスで利き手が安定的に切り替わり、この変化は少なくとも2週間持続しました。
- アセチルコリンの必要性
- 神経トレーシング法により、前脳基底部(コリン作動性ニューロンが集まる脳の深部領域)から運動野へのアセチルコリン投射が、主に同側の脳半球に限定されていることを確認しました。
- 訓練する前肢と対側の脳半球のアセチルコリン神経を選択的に除去したところ、利き手の切り替えが起こりにくくなりました。同様に、光遺伝学的手法(特定のニューロンに光を照射して神経活動を操作する手法)で神経活動を抑制しても、切り替えが妨げられました。
- これらの結果から、訓練する前肢と反対側の脳半球へのアセチルコリンの作用が、利き手の切り替えに不可欠であることがわかりました。
- アセチルコリン活動の左右差の重要性
- GRABセンサー(アセチルコリンの量を蛍光で計測できる生体センサー)と光ファイバーを用いて左右の脳半球のアセチルコリン活動を計測したところ、餌を取る動作の直後に、使用する前肢と反対側の脳半球でアセチルコリン量が一時的に増加することが判明しました。
- この一時的な左右差を化学遺伝学的手法(DREADD法:特定の神経細胞の活動を薬剤で操作する手法)で人為的に操作すると、利き手の切り替えが阻害されました。
- このことから、脳半球間のアセチルコリン活動の一時的な左右差が利き手の切り替えに重要であることが示されました。
今後の展開
本研究は利き手切り替えの神経基盤に新たな知見をもたらしましたが、このアセチルコリン活動の左右差がどのような神経回路によって形成・維持されるのかは未解明です。今後はその回路機構の解明に加え、利き手という性質そのものがどのように形成されるのかについても研究を進める予定です。
参考リンク
運営者情報

